コラム『ウェルトについて考える~名脇役なくして傑作なし』

こんにちは、BROSENTの清水です。。。

 

グッドイヤーウェルト製法、ウェルト靴、靴の話をする時に頻繁に登場するこの『ウェルト』という言葉。
皆さんこれ何のことだかお分かりですか?
今回はこのウェルトと言うパーツの重要性、主に見た目について考えてみたいと思います。。。

 

『茶靴で。。。』、『キャップトゥで。。。』、『ラバーソールで。。。』と、アッパーやソールを条件としてお靴を探していらっしゃる方。おそらく靴屋さんにいらっしゃるお客様のほとんどはそうだと思います。ですが長年靴屋をやっていても『フラットウェルトで探しているんですが。。。』とウェルトを基準にお靴を探すと言う最早神の領域に踏み込んだ感のある達人はお見かけしたことがありません。。。

ですがこのウェルト、靴の構造や耐久性、雰囲気を左右するとても大事な役割を担っていることは意外と知られていません。
構造や、耐久性については5/17にアップしたコラム『靴の寿命について~コバを磨け!』に詳しく書かれているので、興味のある方は良かったら覗いてみてください。

フラットウェルト
フラットウェルト

さて、それでは本題であるウェルトの見た目についてBROSENTで受けられるオプションに沿ってお話していきましょう。

ウェルトはざっくり言って2種類の形状に分かれます。まずはフラットウェルト。文字通り上面が平らになっており、ドレスからカジュアルまで幅広いジャンルの靴に用いられる定番的なウェルトです。

ストームウェルト
ストームウェルト

もう一つが俗にカントリー調と呼ばれるボリューム感のある靴に用いられることが多い、リバースウェルトなどと呼ばれる立った形状のウェルトです。
こちらは厳密に言うと幾つかの種類があり、メーカーによりストームウェルト、リバースウェルト、スプリットウェルト、バブアーウェルトなど様々な呼び方をされます。元々雨などの侵入を防ぐために考えられた仕様なのでハードな雰囲気の靴に良く似合います。

ちょっと話は逸れますが、セメンテッド製法やマッケイ製法の靴にウェルトはありません。
ただグッドイヤー製法風に見せるために『ダミーウェルト』と呼ばれるパーツを別途取り付けることはあります。
やっぱりホントは皆グッドイヤー製法が良いんですね。。。(^^;

BROSENTのオーダーではこのウェルトを含むソール側面の色を自由にお選びいただけます。
基本的には華美になり過ぎないようアッパーとマッチさせることをお勧めしますが、場合によって悩む場合も。。。例えばアッパーがネイビーの場合黒でも茶での合ってしまいます。クールな印象にしたいなら黒、クラシックな印象にしたいなら茶が良いでしょう?濃茶のアッパーには濃茶が一番合いますが、バーガンディのコバにするとちょっと華やかさが出ます。などなどちょっとした雰囲気の変化も楽しめるのでスタッフにご相談ください。

Blackのコバ
Black
Dark Brownのコバ
Dark Brown
Burgundyのコバ
Burgundy

目付あり
目付あり

種類、色が決まったら更に深淵なるウェルトの世界が待っています。(この辺りで『細かすぎて分からないんでお任せで』と言う方、貴方はごく自然です。安心してください。)

 

まずはウェルト上面に施される『目付あり』『目無し』と呼ばれる仕様です。元々は手で出し抜い(ウェルトと本底の縫い付け)を行っていた時代、縫いのピッチを正確に行うための意匠でしたが、現在では形骸化されあており見た目の意匠として今に残ります。

目付なし
目付なし

すっきりした見た目をお好みでしたら『目無し』を選んでもOKです。またフォーマル靴をお作りになりたい場合はシンプルな方が良いので『目無し』の方がお勧めです。

続いてはウェルト、コバの側面に施される『爪』と言う仕様についてです。メーカーさんならまだしも靴屋さんなら気づかない方もいるかもしれない非常に地味で細かい意匠です。コバ(ウェルトを含んだソール側面)の上下の角に付く突起のようなパーツのことを指します。

ソールをより立体的に見せる効果があります。。。とは言え、そう言われても『ん?どこ?』と言うレベルなので、書いている自分でも若干自信がありません。。。が、一般的にはそう言われています。フォーマルの場合『目無し』同様シンプル第一となるので『爪なし』にした方が良いと思います。

爪あり
爪あり
爪なし
爪なし

丸コバ
丸コバ

ドレスシューズには多くの意匠が存在していますが、その中でも靴を『華奢に見せる=ドレッシーに見せる』ための意匠がかなり多く含まれています。
有名な所でいうと【半カラス(=ソール裏面を2色にすることで、ウェスト部分を細く見せる意匠)】、【キューバンヒール=ピッチドヒール(=下に向かってテーパードさせたヒール。やや高めに設定することで、靴全体に角度をつけ細く見せる効果も)】などがこれに該当します。もちろん今回の主役ウェルト=コバにもそういった意匠が存在します。それが俗に『丸コバ』と呼ばれる意匠です。特にウェスト部分(ヒールよりやや前の靴の一番細くなっている部分)のコバに施されることが多く、丸みを付けることで、細くシャープに見せる効果があります。オンタイムに使うつもりなら取敢えずは付けておいて間違いない仕様です。

平コバ
平コバ

逆にカジュアルな雰囲気を出したい場合は『丸コバ』の逆、フラットな形状の『平コバ』がお勧めです。なのでダブルソールや、ハーフミッドソール、ゴツ目のラバーソールなどカジュアル靴に使用されるパーツとは相性が悪いのでお気を付けください。

さて今回はウェルト(コバ)について色々とお話してきましたが、如何でしたでしょうか?
普段はアッパーとソールと言う二大巨頭に挟まれ、目立たず、騒がず生きているウェルト君、コバ君ではありますが、実は靴全体の印象を左右する大事な役割を担っていることをお分かりいただけましたか?
ただ靴屋さんであまりウェルトばかりジロジロと見ていると、店員さんから怪しい目で見られるので注意してくださいね(笑)

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コメント: 3
  • #1

    まーちゃん (日曜日, 18 10月 2020 09:47)

    昔から靴大好き人間で、革靴、ブーツ、高級スニーカー多々所有してて、オーダー靴を先日、2足目を作成しました。今回の2足目は、25万円強の高価なものです。しかし、靴の知識はそんなにありませんでした。感覚で言いと感じたモノには妥協できない性格で。
    それで、今回のオーダー靴は、普段ばきとカジュアル重視でビブラムのラバーソールにしました。今にして考えたら靴職人とのオーダーに関してラバーソールの選択を示したら、『??』のような空気になったような気がします。それは昨日友人に『こんな高級靴はレザーソールに決まってる。ラバーは邪道!』って言われたからです。
    いずれにせよ、アウトソールは消耗部分でいつかは張り替えなくてはならなく、次回に取っておこうと考えてます。
    いきなりなんですが、どう思われますか?
    よろしくお願いいたします。

  • #2

    BROSENT (日曜日, 18 10月 2020 11:53)

    まーちゃん様
    コメントありがとうございます。
    あくまで私見ですが、高級靴=レザーソール、と言うのはナンセンスだと思います。
    履くロケーションによってはラバーソールもありではないしょうか。
    薄手のラバーソールなら見た目もそれほど変わらないですし。
    それよりも選ぶデザインや木型、仕様によっては厚めのラバーソールだと合わないケースの方があると思います。
    オーダー時にお店の方に相談した方が良いと思いますよ。
    一般の方が好きなものを盛り込むと結構頓珍漢な靴が出来ることがあります。
    私は『変ですけど良いですか?』って言ってしまいますが。。。(;^_^A

  • #3

    まーちゃん (日曜日, 18 10月 2020 18:48)

    ご丁寧な回答ありがとうございました。
    ラバーソールで作成した以上、数年間ははきこなすつめりです。以降のメンテナンスや消耗部分の改良は、お店の職人と話して決めて行きたいと考えています。この回答により、少しは自信持ちました。
    本当にありがとうございました。