ブログ『ラストについて~一番大事な物』

こんにちは、BROSENTの清水です。
皆さん靴を選ぶ際どういったことを基準に選ばれますか?
靴を買いに行っているところを想像してみて下さい。
ラウンドトゥの黒のストレートチップを探しに行き、履いてみて判断。。。と言う感じではないですか?
と言う事は靴を買う時の判断基準は『シルエット』『色』『デザイン』『履き心地』の4つと言うことになります。
実はこの4つの判断基準の内半分の2つは一つの物で決定しています。
それがラストです。
日本名は木型と言い、靴を作る際の原型となる物で、その靴の善し悪しを決定する位大事なものです。
今回はそのラストのお話です。

 

ラストは靴の購入判断基準の『シルエット』と『履き心地』に大きな影響を与えます。
この2つの要素をそれぞれラストの【ボール トゥ トゥ】と【ヒール トゥ ボール】で決まります。
ボールとは足の一番広い部分の事を指します。
下の写真の赤線部分の事です。

 

 

つまり【ボール トゥ トゥ】は一番広い部分からつま先の部分の事で、【ヒール トゥ ボール】は踵から一番広い部分の事です。

靴のシルエットは【ボール トゥ トゥ】で決まります。
これは作るのは比較的簡単です。
つま先部分は【捨て寸】と言って実際には足が届かない部分なので、丸めようが四角くしようが作り手側の思いのままです。
デザインする人間の好みや、流行りと言った要素で決定します。

問題は後半部分【ヒール トゥ ボール】の部分です。
『履き心地』を左右する大事な部分ではあるのですが、これが作るのが難しい!
足には人間の骨の約4分の1が集中しています。
それだけにとても複雑な形状をしています。

例えば下の写真。。。

 


 

足のセンターはやや内側に振っています。
と言う事はラストもそのようにしなければなりません。

また足の形状は一般的に内側が真っすぐで、外側は踵から一回外に向かい、ボールからつま先にかけて内側に振って来ます。

 


 

上から見てもこれだけ複雑ですが、更に今度は縦の変化、【土踏まず】と【舟状骨】が加わります。
足に問題が無い限り人間の足には3カ所の踏まずがあります。
一般的に言う土踏まずは足の裏の内側の事を言う場合が多いですが、実は外側と内側にも存在しているのです。

 


 

足の裏も複雑ですが、甲も複雑です。
特に一番出ている部分の骨【舟状骨】、これが厄介です。
この一番高い部分が真ん中にあれば良いのですが、実際はやや内側にいます。
従って足は正面から見ると二等辺三角形のような形状になっています。

 


 

これだけ書けば【ヒール トゥ ボール】を設計するのがどれだけ難しいか分かると思います。
ですが実際には日本でも海外でもこの【ヒール トゥ ボール】はほとんどいじくることがありません。
一度『こんなもんか。。。』と決めたら後は、つま先部分【ボール トゥ トゥ】だけをいじり続けているのが実情なんです。
悲しい事です。
BROSENTではお店を立ち上げる際ラストを一から作りました。
既存の【ヒール トゥ ボール】では納得いかなかったからです。
そのおかげでかなり足の形状に近い立体的なラストを作ることが出来ました。
ただしラストを複雑にするとデメリットも出てきます。
その複雑な形状をきちんと靴に反映させるにはそれ相応の技術がないとならないのです。
全てを機械任せのメーカーだとラストとアッパーの間に隙間が出来て、全く異なった形状の靴が出来てしまいます。
その点生産を依頼しているセントラル靴さんは肝心の部分、踏まず部分などは手で成形してくれるので、ラストの形状をきちんと靴に反映させることが出来るのです。
靴業界ではあまり使わない言葉ですが、【セミハンド】ですね。
機械で済ますことが出来る所は機械を使いコストダウン、要所は手仕事でキチッと、と言う事です。
ちょっとラストから話が逸れましたが、コッペパンのような真っすぐで左右対称のラスト、それを誤魔化すためにライニングにクッション材を用いた靴が世の中にはたくさんありますが、とことん拘ったラストを使った靴があるんだぞ!と言う事を是非頭の片隅にでも置いて頂けたら嬉しいです。
是非一度BROSENTの靴の履き心地を体験してみて下さい!

 


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